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キットキミニハトドカナイ
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「もし、私が他の男の人と結婚しても良いの?」

唐突にそう聞かれた

僕の幼馴染みであり隣のお姉さんである女(ヒト)

小さい頃から可愛がって貰っていた


いつも一緒に通学して

いつも一緒に帰宅して

いつも一緒に遊んだりして


いつも いつも いつも


それが、僕等にとっては当たり前だった

それが、突然終わりを告げた

それが、唐突に崩れ始めた

それが、簡単に崩れてしまった


10年の月日が流れ

僕は14歳

彼女は16歳

彼女の家は由緒正しき家柄

彼女が結婚を許される歳になったその時

彼女の見合いが決まった


そんな、時だった

彼女は僕にそう聞いたのだ


「もし、私が他の男の人と結婚しても良いの?」

僕には聞かれている意味が

分かるようで分からなかった

本当に分からないのか

分かっていて気づかないフリをしているのか・・・

おそらくは後者だろう


だから、

だから、僕は

だから、平民である僕は

だから、一般庶民である僕は

だから、彼女から遠い僕は

だから、弱い僕は


言う事など始めから決まっていた


「僕には分からないですよ」

そう言った

「そう・・・」

彼女は少しだけ微笑んでそう言った

その表情は何とも悲しく痛切で儚げで弱々しくて辛いモノだった

その表情の理由を僕は知っている

知っているからこそ

「僕はアナタが幸せならそれでいいです」

「ばか」









(私がアナタなしで幸せになれないこと知ってる癖に・・・)

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好きだと言わせたい

いつも鉄面皮な彼女に

彼女に対して鉄面皮は酷いけど・・・


俺からしかいつも好きだと言わない

俺から好きになったんだから仕方ないけど

彼女の口から一度も聞いた事がない


不安だよ・・・・


彼女の視線はいつも俺でなく本


俺本以下?



彼女に言わせてみたい


不安で仕方ないんだよ


「なぁ、」

「ん?」

「好きだよ。」

「うん。」


お互いに背を向けたまま

俺達は部屋の中に座っていた

俺からの言葉はいつも流される


「・・・・大好きだよ」

「うん。」



俺からの愛の告白はいつも流される

彼女は相変わらずの調子で本を読み続ける

視線はずっと本のまま



「俺の事好き?」

「うん。」



ホントに?

や、信じるよ

信じるけど・・・


それでもやっぱり不安だよ



「私は、」

「え?」

「私は言葉は信用しない」


ふと

背中に温もりと重みを感じた

相変わらず本を読みながら

俺にもたれ掛かって

彼女は静かにそう言った




触れ合っている事で分かる事がある



だけど、言わなきゃ伝わらない事もあるって事知ってる?








わりに
「めんどくさくない?」

「何が?」



時は夕暮れ

教室に二人




「コレ」

「仕方ないよ。これが仕事なんだから」



クラスのアンケートの集計中

俺の斜め前に座っている同じクラスの同じ委員会の御蔭

少し離れた席でただ黙々と作業をしていたら

突然話しかけられた



「部活行きたかったのに・・・」

「そんなに嫌なら委員会の仕事やらなきゃ良かったのに」



どちらとも相手の顔を見ることなく

机の上に溜まっている紙を一枚一枚見ながら

新しい紙に集計結果を書き込んでいく



「それに立候補したのは御蔭自身じゃん」

「仕方ないじゃん。誰も手あげなかったんだもん。それに・・・」

「それに・・・?」



お互い手を止める

俺は御蔭を見るが

御蔭は俺の方を見ることなく

止まった手をじっと見つめていた



「九陽とだったら面白そうだと思って」

「えっ?」



それはワザと?

それともただの天然?

どっちにしても君はずるいと思う



「知らない人より知っている人と一緒の方が良いじゃん」



そんな言葉俺は聞いてない訳で

俺は君に嵌ってしまった訳なんですよね

まったく

本当にするいと思う

君はいつも変わらない笑顔で僕を迎えてくれる


そして、

白い部屋の白いベットの中で


白い雪の降っている窓の外を見つめて


「早く明日が来るといいね」


と呟く


「どうして君は・・・」


言いかけて止めた




それ以上は出なかった







どうして君は


明日にでも死んでしまうのに



そんなに笑顔でいられるの?







どうして君は・・・・


明日にでも死んでしまうのに



そんなにも明日が来る事を望んでいるの?





明日なんてこなければ良いのに




そう言ったら君は


「今日がずっと続くなんて私嫌よ。そんな退屈な事・・・死ぬよりも苦痛だわ」



きっと怒った顔して言うだろう・・・





「ねぇ 俺のどこが好き?」

「分かんない」



相変わらず本を見ながらそう答える彼女

つれない


「そういう時はさ、普通全部とか答えるんじゃないの?」

「普通じゃないから」



確かに普通じゃないね

俺から告っといてなんだけど


やっぱりさ

向こうから一度も好きって言われないと


さすがにへこむよな





「分かんないけど、貴方といると楽しいわ」


彼女を見ると俺の方をちゃんと見ていた

だけどすぐに本に視線を戻す

少しだけ頬が染まってる

そう見えただけかもしれないけど・・・



「俺といて良かった?」

「そうね」


その言葉は結構嬉しかったりするものだ


俺って単純なのかもしれない



だからさ・・・


「今のところは・・・」


とか言われるとまたへこんだりするんだぜ
 

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